B:執念の族長 死灰のアルビン
「アルビン」というのは、約800年前にザナラーンにやって来た、ヒューラン族の部族長の名だ。
当時、ララフェル族の「ベラフディア」が支配していたザナラーンに攻め込んだが敗れ、討ち死にを遂げたらしい。
しかし、執念深い彼の肉体は、今も彷徨っているという。
~手配書より
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ショートショートエオルゼア冒険譚
オアシスの族長であるウ・オド・ヌンが口を開いた。
「おい、不滅隊。アルビンがどういう奴だったか言ってみろ」
急に乱暴に振られて不滅隊リスキーモブ担当官のミミオはララフェル族の特徴である小さな体を一瞬強ばらせて戸惑った様子を見せたが静かに答えた。
「ベラフディアを侵略し略奪をしようとした人物です」
ウ・オド・ヌンは地面に唾を吐くと言った。
「へっ、ほらな。都会に行くと真実ではないことが真実かのように捻じ曲げられる」
「事実じゃないというんですか?」
ミミオは怪訝な顔で聞いた。
「ララフェル族の都市国家であるウルダハにとってはその方が都合がいいんだろうな」
ウ・オド・ヌンはそっぽを向いて捨てる様に言った。
「教えてください。本当はどんな人だったんですか?」
ミミオは迫るように前のめりになって聞いた。
ウ・オド・ヌンはミミオの目を見た。ミミオは真っすぐ見つめ返した。
「例えばだ・・・。あんたが善意で助けてやった奴がいつの間にかあんたの家を乗っ取り、追い出されたらどんな気分だ?あんたは自分の子供が飢えて死にそうなのに食料のある家を乗っ取った連中がそれを見ながら笑って食べ物を捨てていたらどんな気分だ?」
「それは・・・。なにか関係が・・?」
ミミオは口ごもったのを見てあたしは口を挟んだ。
「アルビンが争いに走ったのは仕方がなかった事だったといっているの?」
ウ・オド・ヌンは両手の掌を上に向けて肩をすくめると皮肉っぽく笑いながら言った。
「さぁな。だが俺がその立場でも他に道は見えねぇな」
言い終わるとほぼ同時にお付きの文官の一人が一冊の古書を持ってきた。
「これを読んでみな。このオアシスの族長家に伝わる記録書だ。ま、歴代族長の日記みたいなもんだ。古くて破れやすいから気を付けて読め」
というとページを開いてミミオに手渡した。
古書は日記形式に様々ことが書かれていたが、その中からアルビンに関する部分を摘み読みした。
~難民としてサゴリー砂漠に入っってきたララフェル達はこの厳しい気候に適応できずに次々倒れていっている。恵まれた気候で暮らしてきたララフェル達は砂漠で生きるすべを持たなかったのだ。哀れだが仕方がない。
~見かねたお人よしのアルビンが救いの手を差し伸べた。
砂漠での生き方、資源の得方、様々な知恵を伝授しているらしい。お人よしのアルビンらしい。これでララフェル達も何とか生きていけるだろう。
~アルビンの教え方がいいのか、ララフェルの要領がいいのか。ララフェル達の暮らしは見る間に安定し独立を果たした。さらに新たな資源をどんどん得ているという。なんとも強かな民族だ。
~ララフェル達の勢いがすごい。昨年から築き始めたララフェルの街も形になってきた。ベラフディアという国を建て我々オアシスの民はそこに編入されるらしい。
~アルビンたちは手掛けていた開拓事業が立て続けに失敗に終わり、資源を得るための地を失ってしまったそうだ。アルビンは打開策を模索したが見つけられず、限られた資源が底をつき、貧困に窮しているらしい。心配だ。
~あまりの貧困にアルビンの民は次々と倒れはじめているらしい。打つ手の尽きたアルビンは最後の命綱としてベラフディアに一時的な救援を求めたらしいが、ベラフディアはそんなアルビンを愚かなお人よしと笑い物にし、一切の援助を拒絶したようだ・・・。
~恩を仇で返す所業にも耐えながらアルビンはベラフディアに救援を懇願したがベラフディアは水の一滴、米の一粒も援助をしていない。そればかりか餓死したアルビンの側近や仲間を揶揄するような暴言を吐いているそうだ。さすがのアルビンも限界ではないだろうか・・。
~ついに戦争がはじまってしまった。我々オアシスの民の多くはベラフディアの所業に激怒し、アルビンを支持している。アルビンともに戦いたいが、ベラフディアに編入された際に使用人の名目で多くの人質をとられており立ち上がることが出来ない。無念に思う。
ミミオは古書から目をあげると暖炉の火をじっと見つめた。
「これが、真実ですか・・・」
ボソッと呟いた。
「ウルダハとシラディハの戦争があったろう?シラディハが禁断の薬の制御を誤って国民をゾンビ化させたってやつだ。あれだって真実はどうか分かったもんじゃないと俺は思ってるがね。」
そういうとまたエールを煽った。
「まぁ、怨霊になっちまった以上、今のアルビンを擁護したり、狩るななんてこた言わないし、その処置を考えることは否定しないがな。ただ、正しい歴史ってもんをあんたのような人は知っとくべきだろ。そうじゃないと、、報われねぇ」
ミミオはおもむろに立ち上がり、ウ・オド・ヌンに敬礼の姿勢を取った。ウ・オド・ヌンはミミオを一瞥してまたジョッキに視線を戻した。
「サゴリー砂漠をずっと南下するとな、ポツンと立ってる岩山がある。その辺りに奴は出ることが多い。会えたら、ベラフディアが自滅の道を歩み滅んだだことを教えてやってくれ」
ウ・オド・ヌンはそういうと立ち上がって奥の部屋へと姿を消した。